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軟骨損傷の新しい治療法

鉄粉を混ぜて磁石で誘導!

一度損傷すると治癒がむずかしい軟骨の新しい治療法として、患者の細胞で培養した軟骨の細胞や幹細胞を使った自家移植があります。なかでも幹細胞に鉄粉を混ぜて、体外から磁石の力で欠損部分まで誘導する再生外科手術に期待が寄せられています。

◆おもに関節や骨の結合部などにある、弾力性に富む軟骨。骨が受ける衝撃を吸収したり、関節の曲げ伸ばしの際の骨と骨の摩擦を防いだりと、重要な働きをしています。軟骨の細胞には増殖する能力はあるのですが、運動や外傷などで傷つくと、自然治癒することはむずかしいと考えられています。

◆軟骨損傷の治療としては、痛みや炎症を抑える対症療法を行うとともに、重症の場合には軟骨内にある軟骨のかけらを除去する手術(軟骨片除去術)や、影響の少ない場所の骨や軟骨を移植する手術(自家骨軟骨移植術=モザイクプラスティ法)などが行われます。しかし、対応できる患部の大きさに限界があること、治療後にスポーツが続けられなくなるなど、難点も多くみられます。

◆そこで研究が進んだのが、同じ移植でも培養した患者自身の軟骨を用いる「自家培養軟骨移植術」です。2013年保険適用になりました。採取した軟骨細胞はコラーゲンゲルの中で約4週間培養され、欠損した部分に戻されます。モザイクプラスティ法では軟骨の損傷が4cm2未満という条件がありましたが、自家培養軟骨移植術ではさらに大きな損傷でも適用されます。

◆そして2015年に広島大学で実施されたのが、自家培養軟骨移植術の開発を行った同じチームによる、骨髄間葉系幹細胞を用いた再生外科手術です。間葉系幹細胞とは、間葉系に属する、骨芽細胞、脂肪細胞、筋細胞などに分化する能力をもつ細胞で、軟骨細胞にも分化可能です。再生医療の分野では重要な存在になっています。

◆まず患者の骨髄液を採取して骨髄間葉系幹細胞を培養します。その細胞にフェルカルボトランというMRIの造影剤に用いる鉄粉(磁性物質)を混ぜ、患者の膝関節に注入。体外から強力な磁石で、注入した幹細胞と鉄粉を軟骨の欠損部に誘導するという方法です。

◆磁力を当てる時間は約10分。手術は約1時間で終了。鉄粉は2週間ほどで体外に排出され、術後、軟骨の細胞は半年から1年かけて修復されます。2年間は医師の経過観察が必要になります。

◆手術を受けた18歳の女子高校生は、術後1年を経過して痛み等の症状は消失したそうです。長期的な安全性が確認できたら、若年者のスポーツなどによる軟骨損傷を対象に保険適用を目指すといいます。

◆何よりも患者にとって低侵襲(からだに切開等の負担が少ない)なことがメリットです。従来の手術では切開も大きく大がかりな手術が必要でしたが、この手術は内視鏡を用いたもので約5mmの傷が2箇所ですみます。幹細胞の採取も骨髄穿刺によって得られた骨髄液を使うので、外来で行うことも可能です。

◆今後は先進医療として治療が開始される見込みです。安全性を確認しながら、どれくらいの回復が望めるのか、研究者のみならず軟骨損傷に悩む患者からも熱い視線が集まっています。

(監修:あそうクリニック院長 麻生伸一/2017年5月30日)

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