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乳児には危険「ボツリヌス菌」

身近な細菌だが毒素は強い

2017年3月、生後6か月の乳児がハチミツを食べて死亡したことから、あらためてボツリヌス菌への注意が促されています。ボツリヌス菌は泥や砂の中で生息するごく身近な細菌。食中毒の原因としても知られていますが、一方で美容や医療用として利用されている側面もあります。ボツリヌス菌ってどういうもの?毒性の被害にあわないためにはどうする?

◆ボツリヌス菌は土壌に生息する嫌気性(空気を嫌う)の細菌です。低酸素の環境になると活動が活発になり、毒素を生産。毒素は自然界の中でも最強のものといわれ、このボツリヌス菌の毒素が付着した食品を食べて起きるのがボツリヌス食中毒です。

◆またボツリヌス菌は、1歳未満の乳児には「乳児ボツリヌス症」を引き起こします。ボツリヌス菌は嫌いな環境では芽胞(がほう)と呼ばれる硬い殻に閉じこもりますが、実は赤ちゃんの腸内は1歳をすぎるころまでは、この芽胞がボツリヌス菌へと育ちやすい環境だといいます。

◆乳児ボツリヌス症は、便秘が数日続き、全身の筋肉の力が弱まって脱力状態になり、泣き声は小さく元気がなくなり、母乳・ミルクののみが悪くなるといった症状が特徴です。治療は対症療法で回復を待つのが基本で、致死率は低いとされていますが、最近の例のようにけいれんや呼吸困難を起こして死亡することもあります。

◆乳児ボツリヌス症を引き起こす可能性がある食品として、はっきりしているのはハチミツです。厚労省では以前から1歳未満の乳児にはハチミツを与えないよう通知を出していますが、今回は危険を知らずに離乳食として与えていたのが原因になったとのこと。なお、黒糖にも危険があるという指摘もあり、過去には原因不明の発症例もあるので、気になる症状が見られたときはハチミツにこだわらず、受診しましょう。

◆ボツリヌス食中毒の場合は、自家製のいずし、キリコミ、真空パックされた食品(過去の例では辛子レンコン、ハヤシライスの具など)、自家製のビン詰(オリーブの実の例あり)や缶詰(海外でタケノコの例あり)などが原因になりやすい食品です。海外ではチーズソースやハーブティーによるものも報告されています。

◆また、近年流行のジャーサラダも要注意です。ドレッシングといろいろな野菜を密封できる容器に詰めて作るジャーサラダは、腸炎ビブリオ菌など定番の食中毒菌の温床になるのではと懸念されていますが、ビンを密封する状態はボツリヌス菌の増殖を招く危険も大いにあるといえます。

◆ボツリヌス食中毒の典型的な症状は、瞼が垂れ下がる、ものが二重に見える、ろれつが回らない、など。重症な場合は、大人でも呼吸が困難になることもあります。おかしいと感じたら、すぐに受診してください。

◆予防としては次のことに気をつけてください。
(1)真空パックや缶詰が膨張、異臭がするときは汚染の可能性があるので食べない。
(2)芽胞は120℃・4分、毒素は80℃・30分で死滅する。自家製食品を作るときは、原材料をよく洗い、十分な加熱を。
(3)毒素は3℃以下では増殖しないので、保存は冷蔵・冷凍で。

◆一方でボツリヌス菌の出す「ボツリヌストキシン」という毒素は天然のたんぱく質であり、それを希釈してシワを伸ばす美容法(ボトックス注射)として利用されています。また、神経に作用する特徴を生かし、首や肩の筋肉が収縮して首が傾く「痙性斜頸(けいせいしゃけい)」などによる筋肉の痙縮(けいしゅく/つっぱり)をやわらげる治療にも有効です。

◆危険な存在であると同時に、使い方次第では薬にもなるのが「ボツリヌス菌」です。毒にさせない知恵をつけたいものです。

(監修:医療法人社団秀志会 松平小児科院長 松平隆光/2017年9月12日)

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