「なぜ眠くなるか」解明の糸口を発見
新たな睡眠障害の治療法開発の可能性も
睡眠はまだ多くの謎に包まれています。そもそも、眠らないでいると、なぜ眠気がくるのでしょうか。脳の中ではどんな変化が起きているのでしょうか。その解明の糸口となる発見が、筑波大学の研究チームによって発表されました。
◆眠気はどこからくるのでしょうか。その解明の糸口となる発見が、筑波大学の研究チームにより発表されました。それは「脳内の80種類のたんぱく質がリン酸化すると眠気が起き、眠るとたんぱく質は元に戻る」というもので、同研究チームでは、これらのたんぱく質群が眠気の実体とみて、スニップス(SNIPPs〔Sleep-Need-Index-Phosphoproteins〕)と命名しました。
◆実験では、不眠状態にしたために眠い野生マウスと、睡眠が足りていても眠い状態が続くように遺伝子操作をしたマウスが使われました。これまでも、不眠状態にしたマウスを使った研究は行われていましたが、脳内たんぱく質の変化が、不眠のストレスによるのか、眠気によるのか判別できなかったため、今回は遺伝子操作をしたマウスが使用されました。
◆その結果、不眠状態の野生マウスの脳内では、眠気の程度に応じて、スニップスのリン酸化が進み、眠ると元に戻りましたが、遺伝子操作をしたマウスは睡眠後もスニップスはリン酸化したままでした。さらに、両方のマウスにリン酸化を阻害する薬を投与すると、どちらのマウスも眠気がおさまることを脳波で確認しました。
◆つまり、スニップスは、ストレスとは無関係に、「眠い」という睡眠要求によってリン酸化が進むことがわかりました。また、80種類のスニップスのうち69種類は、神経細胞の情報伝達をするシナプスの機能や構造に重要な役割を果たしているたんぱく質であることもわかりました。
◆人に限らず、脳をもつ生物は必ず睡眠と覚醒のリズムを繰り返しています。このリズムは、太陽の動きに同調している体内時計と、体の機能を調節する恒常性(ホメオスタシス)によって調節されています。わかりやすく説明すると、夜になると眠くなる、疲れたら眠くなるなどといったことです。
◆脳を持つ生物はまったく眠らずに生きていくことはできません。なぜなら、睡眠中には体内で細胞の修復、ホルモンの分泌、新陳代謝、記憶の整理など、さまざまな“メンテナンス”が行われるからです。生命を維持するうえで睡眠はメンテナンスの1つとして必要不可欠なのです。しかし、生活環境や生活習慣、病気などあらゆる理由が原因で不眠症や傾眠症などさまざまな睡眠障害を発症することがあります。
◆今回の筑波大学の発見をもとに、「眠気」と「眠りの機能」の解明がさらに進めば、不眠症や傾眠症などさまざまな睡眠障害の新たな治療法が開発される可能性があります。あるいは将来、一時的に眠気をコントロールすることもできるかもしれません。
(監修:寺本神経内科クリニック院長 寺本純/2018年11月23日)
◆眠気はどこからくるのでしょうか。その解明の糸口となる発見が、筑波大学の研究チームにより発表されました。それは「脳内の80種類のたんぱく質がリン酸化すると眠気が起き、眠るとたんぱく質は元に戻る」というもので、同研究チームでは、これらのたんぱく質群が眠気の実体とみて、スニップス(SNIPPs〔Sleep-Need-Index-Phosphoproteins〕)と命名しました。
◆実験では、不眠状態にしたために眠い野生マウスと、睡眠が足りていても眠い状態が続くように遺伝子操作をしたマウスが使われました。これまでも、不眠状態にしたマウスを使った研究は行われていましたが、脳内たんぱく質の変化が、不眠のストレスによるのか、眠気によるのか判別できなかったため、今回は遺伝子操作をしたマウスが使用されました。
◆その結果、不眠状態の野生マウスの脳内では、眠気の程度に応じて、スニップスのリン酸化が進み、眠ると元に戻りましたが、遺伝子操作をしたマウスは睡眠後もスニップスはリン酸化したままでした。さらに、両方のマウスにリン酸化を阻害する薬を投与すると、どちらのマウスも眠気がおさまることを脳波で確認しました。
◆つまり、スニップスは、ストレスとは無関係に、「眠い」という睡眠要求によってリン酸化が進むことがわかりました。また、80種類のスニップスのうち69種類は、神経細胞の情報伝達をするシナプスの機能や構造に重要な役割を果たしているたんぱく質であることもわかりました。
◆人に限らず、脳をもつ生物は必ず睡眠と覚醒のリズムを繰り返しています。このリズムは、太陽の動きに同調している体内時計と、体の機能を調節する恒常性(ホメオスタシス)によって調節されています。わかりやすく説明すると、夜になると眠くなる、疲れたら眠くなるなどといったことです。
◆脳を持つ生物はまったく眠らずに生きていくことはできません。なぜなら、睡眠中には体内で細胞の修復、ホルモンの分泌、新陳代謝、記憶の整理など、さまざまな“メンテナンス”が行われるからです。生命を維持するうえで睡眠はメンテナンスの1つとして必要不可欠なのです。しかし、生活環境や生活習慣、病気などあらゆる理由が原因で不眠症や傾眠症などさまざまな睡眠障害を発症することがあります。
◆今回の筑波大学の発見をもとに、「眠気」と「眠りの機能」の解明がさらに進めば、不眠症や傾眠症などさまざまな睡眠障害の新たな治療法が開発される可能性があります。あるいは将来、一時的に眠気をコントロールすることもできるかもしれません。
(監修:寺本神経内科クリニック院長 寺本純/2018年11月23日)
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