モバイルサイト「ケータイ家庭の医学」はこちら!
https://sp.kateinoigaku.ne.jp/

めまい、耳鳴り、体の痛み 低髄液圧症候群

子どもの不登校との関連ケースも?

脳と脊髄の周りにある、無色透明の液体、脳脊髄液。なんらかの原因で漏れ出してしまうとめまいや倦怠感など、さまざまな症状が起こります。これを「低髄液圧症候群」といいます。この症候群の別名「脳脊髄液漏出症」の診断基準が確定したのは2014(平成26)年。あまり知られていない病気なので、原因不明の頭痛やめまいが、この病気である可能性もあるかもしれません。どんな症状、そして治療法があるのでしょうか。

◆脳脊髄液(髄液)は、脳と脊髄をすっぽり包んでいるクモ膜の下のクモ膜下腔を流れています。脳の周りに約65ml、脊髄に約75ml、全量で130〜140mlが脳室でつくられています。1日の産生量は約500mlなので、1日に3〜4回入れ替わっていることになり、最終的には静脈や毛細血管などに吸収されます。外からのショックをやわらげて脳や脊髄を守る、栄養を補給する、代謝産物を排出する、などがその役割です。

◆脳脊髄液が何らかの原因でクモ膜下腔の外側の硬膜から漏れ出してしまうのが「低髄液圧症候群」です。「脳脊髄液漏出症」「脳脊髄液減少症」とも呼ばれ、おおよそ同じような病態を示します。髄液が漏れ出て量や圧が低下することで、脳の位置も変わり、さまざまな症状があらわれます。

◆原因として多いのが、交通事故やスポーツでの事故、転倒・転落、暴力などの外的な力によるもので、とくにむち打ち症との関連が強いと考えられています。そのほか、脊椎手術、腰椎穿刺(ようついせんし)などの医療行為によるもの、出産などが要因となります。「慢性疲労症候群」や「線維筋痛症」との関連も指摘されています。

◆主な症状は起立性頭痛で、頭を上げて座った姿勢・立った姿勢で症状は強くなります。倦怠感と疲れやすさを伴うことが多く、めまい、耳鳴り、頸部の痛み、四肢の疼痛、動悸、息切れ、体温調節の異常、不眠、注意力低下、記憶力低下、抑うつ感といった、全身にさまざまな症状があらわれます。硬膜が破れていなくても、脱水などで脳脊髄液が減少すれば同様の症状を起こします。

◆まず問診で、症状や原因の有無を確認し、低髄液圧症候群が疑われる場合は、MRIで脊髄液の減少で起こる変化を調べます。さらにRI脳槽シンチグラフィー、あるいはCTミエログラフィーやMRミエログラフィーという検査で髄液の流れをみて、漏れ出ていないか、漏れ出ている箇所はどこかを確認します。

◆原因となりうる事故などの直後または1カ月以内に症状があらわれた場合は、急性期と考えて約2週間、安静と水分補給の保存的治療を行います。早期に行うと漏れ出るのが止まり、保存的治療だけで完治することがあります。発症から1カ月以上経過した場合や、保存的治療で改善されない場合には、「硬膜外自家血注入療法(ブラッドパッチ)」を検討します。

◆ブラッドパッチは、その名の通りブラッド(血液)でパッチする(孔を塞ぐ)療法です。血液が凝固する性質を利用して、患者本人の血液を漏出部位の近くに硬膜外穿刺で挿入、徐々に固まって漏出箇所を塞ぎます。2016(平成28)年から保険適用となっている治療法です。

◆ブラッドパッチの有効率は、成人が2〜3回の施術で約7割、15歳以下が1〜2回の施術で約9割とされています。副作用として硬膜外穿刺の際に頭痛、背部痛、腰痛などが起こる可能性がありますが、多くは一過性です。原因が脱水の場合には水分補給や点滴だけで改善します。

◆低髄液圧症候群は、近年、子どもの不登校の原因となる可能性も注目されています。とくにコンタクトスポーツや学校生活での転倒などのアクシデントで発症し、その後、朝起きられない、だるいことから不登校になるケースも少なくないといいます。思い当たることがあれば、脳神経内科・外科や脊髄を専門にする整形外科を受診して、適切な診断・治療を受けましょう。

(監修:寺本神経内科クリニック院長 寺本純/2020年3月26日)

気になる身体の症状を
◆チェック◆
症状チェック 食事記録 お薬検索 病気検索

『家庭の医学』

1969年の発行以来、
累計約330万部の
ロングセラーの最新版

総監修:聖路加国際病院院長
福井次矢

信頼の『家庭の医学』最新版を
iPhoneアプリにギュッと凝縮!


外出先でのアクシデントの際にも活躍!


はい、いいえで答えるだけで、気に
なる症状の対処方法がわかる!

あなたの隣にある危機

糖尿病網膜症

早期受診で失明を防ぐ
著:右田 雅義(右田眼科 院長)
東海林 のり子(リポーター)
定価1,836円(本体1,700円)

在米日本人のための必携医療マニュアル

アメリカでお医者さんにかかるときの本

異国の地で、英語で、受診する不安を軽減
著:あめいろぐ(在米日本人医療従事者による情報発信サイト)
監修:メイヨークリニック 予防医学フェロー 反田篤志
定価3,000円(本体2,778円)

手術以後のすごし方

心臓病そのあとに・・・

心臓手術以後のQOL向上のための生活ガイド
著:高知大学病院 心臓血管外科 教授 渡橋和政
定価1,296円(本体1,200円)