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精神疾患の親をもつ子どものケアは?

親の心の病、子どもへの影響は?

うつ病、不安障害、統合失調症などの精神疾患を抱えながら、子育てをする患者が増えています。親に精神疾患がある場合、その子どもにはどんな影響が出て、どのような支援が必要なのでしょうか。周囲の大人ができることは?

◆精神疾患の患者数の増加に伴い、近年、「精神疾患の親をもつ子どもの支援」に目が向けられるようになってきました。親が精神的な病気を抱えていると、子どもにどのような影響があり得るのか。発症時の子どもの年齢や、どんな病気を発症したのかによって、影響する内容や程度に違いはありますが、研究者の調査により、子どもが感じていることや生活上のさまざまな困難がわかってきています。

◆ほとんどのケースで、子どもは親の疾患について誰からも説明されていないため、「なぜそうなるのかわからないまま、親の症状に振り回される」状況に立たされるといいます。怖くて不安な気持ちを抱き、深く傷つくこともあります。また、親の症状(言動)を見て、「自分のせい」と考えてしまう子どももいます。

◆さらに、親の状態を「他人に言ってはいけない」こととして捉える(あるいは家族から口止めされる)ため、学童期になり先生やほかの子どもと交流するようになっても、家庭の状況を知られないように振る舞いがちです。そのため、なんでも話せる親しい友人ができないという悩みも生じやすくなり、人との関係づくりが苦手になってしまうこともあります。

◆生活面で問題なのは、家事や育児を担う親が精神疾患になると、子どもが身の回りの世話をしてもらえない状況に陥りやすいことです。ひとり親の場合や、祖父母、親戚など日常的に手助けしてくれる大人がいないと、毎日の食事がきちんと食べられない、清潔な着替えや入浴などが準備できない、学校に持参すべき道具や給食費などをもって行けない、季節に応じた寝具や冷暖房器具などを使えない、といった衣食住にまつわる困難が子どもにのしかかってきます。

◆小学生のころから、家事全般や弟妹の世話をしてきたという子どももおり、その負担は、中学生以降さらに大きくなります。同時に、貧困という問題を抱えているケースも少なくありません。家庭内の混乱により、しばしば遅刻や欠席をしたり、学校生活を楽しめない、勉強に集中できない、家に帰りたくないなどと街をさまよったりする子どももいるといいます。通常は家庭で経験したり教えられたりするはずの安定したコミュニケーションや生活習慣、金銭感覚などを自然に身につけることができず、そこから劣等感や疎外感が生まれ、思春期・青年期以降の生きづらさにつながるケースもあります。

◆では、子どもの不安や負担を軽減するにはどのような支援が必要でしょうか。早くからこの問題に取り組んできた欧米の専門家や国内の研究者による支援のポイントをまとめると、@親は病気であること、それは親や子どものせいではないことを伝えるA親が具合の悪いときのつき合い方を一緒に考え、知っておくB子どもなりのがんばりを認めたうえで、どんな気持ち(つらい、悲しい、腹が立つなど)があってもよいと伝えるC話を聞いてくれる健康な大人や友達とのつながりをもち、子どもらしく過ごせる時間を確保する、などがあります。できれば、地域の保健師や社会福祉サービスの専門家に参加してもらいながら、病気の当事者とその家族の支援も含めて体制づくりをするのが望ましいでしょう。

◆家族以外の人が@を行う場合は事前に家族とも話し合い、子どもの年齢、性格に合った言い方を考えます。Aでは、親のいる場を離れて別の部屋で好きな遊びをするなど、現実的な対応策を伝えます。また周囲の大人は、「〇〇ちゃんがいい子にしていたら、ママ(パパ)の病気も治るよ」「〇〇君が妹や弟の面倒をしっかり見てね」など、がまんや負担をかける言葉がけはしないように気をつけます。親のケア役ではない、1人の子どもとして子どもらしく過ごせる時間を味わえるよう配慮しましょう。

◆親に精神疾患がある場合、もう1人の親の存在が重要です。精神疾患の親に対しては、放っているわけではなく真剣に対応を考えて日ごろから行っている姿勢を子どもにも示し、そのうえで、具合が悪いときには家族としてどうしたらよいかを、子どもが無理なくできる範囲で伝えていきます。

◆病気の親自身が外部に支援を求めにくく、困難を抱えた子どもに気づけていないことがあるかもしれません。近所のつながりや同級生の親、学校の教員やカウンセラー、学童指導員、民生委員など、顔見知りの大人の存在は重要です。子どもの様子を見て些細なことでも、あれ?と思ったら、「だいじょうぶ?」などと声をかけ、心配があれば地域の窓口に相談してください。

◆なお、各自治体には、精神疾患の当事者、子どもを含む家族を支援するサービスもあります。市区町村の障害課や福祉課、子育て支援担当、学校や児童相談所などにたずねてみるとよいでしょう。

◆精神疾患の親をもつ子どものさまざまな困難の背景には、身体疾患に比べて精神疾患の患者や家族に対する理解がまだ不十分な社会の現状があります。心の病気は誰でもなり得る身近な病気です。当事者はもちろん、その子どものケアについて正しい理解と温かい支援が求められています。

(監修:東急病院 健康管理センター所長兼心療内科医長 伊藤克人/2020年4月6日)

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