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薬剤性耐性菌 国内で8000人超が死亡

とりあえず抗菌薬”はNG!

薬剤耐性菌で2017年に約8000人が死亡したと、2019年12月、国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンターなどの研究チームが公表しました。薬剤耐性菌による死者数の調査は国内で初とのこと。抗菌薬の使用を含め、問題になっている薬剤耐性(AMR)について、あらためてまとめます。

◆薬剤耐性(antimicrobial resistance;AMR)はいま、世界的に重要な問題となっています。アメリカではAMR関連死が約3.5万人超、欧州では3.3万人と推定され、各国共同で対策をとらなければ耐性菌の種類が増え、2050年にはAMR関連の死者数は全世界で年間1000万人超になるだろうという試算も出ています。

◆2015年の世界保健機関(WHO)の最高意思決定機関、世界保健総会(WHA)からの各国への要請もあり、わが国でも2016年「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」を策定して、AMR対策を本格化しています。その一環として、薬剤耐性菌による死者数の調査が行われました。

◆調査方法は、厚生労働省の院内感染対策サーベイランス(JANIS)のデータをもとに、全国の菌血症による死者数を推定したものです。菌血症とは血液に細菌が入り込んで起こる病気で、今回の調査では、原因菌として頻度の高いメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)とフルオロキノロン耐性大腸菌(FQREC)が対象になりました。

◆MRSAによる推定死者数は4224人、FQRECは3915人で、2011〜2017年の推移をみると、MRSAによる菌血症は横ばい状態の一方、FQRECは増加傾向にあるということです。

◆ではなぜ、細菌が薬に対する耐性をもってしまうのでしょうか。細菌はさまざまなメカニズムを用いて宿主(ヒトの体)内で生き延びようとします。たとえば、細菌の外側の膜を変化させて薬が侵入しないようにする、侵入した薬を排出する、薬の作用点(DNAやRNA)を変化させて効果を無効にする、「バイオフィルム」と呼ばれる膜で外側を覆い、薬から身を守る、などが考えられます。細菌からすれば、生存を賭けた当然の戦略といえるかもしれません。

◆薬剤耐性(AMR)は抗菌薬の不適切かつ過剰な投与で引き起こされることがわかっています。肺炎や尿路感染症など、細菌が原因となる病気の場合、原因菌を特定することが困難な場合も多く、そのため広範囲の細菌に効く抗菌薬が用いられることがあります。ヒトの体には多くの常在細菌があり、バランスを保っていますが、この抗菌薬の投与でそのバランスが崩れ、その結果、耐性を得ていたターゲット菌の増殖を許してしまうのです。また、必要量を飲み切らなかった場合、生き残った耐性をもつ強い細菌のみが増殖してしまうこともあります。

◆AMRは、今回の調査対象のMRSAとFQRECのほかにも、ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)、多剤耐性緑膿菌(MDRP)、カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)など多数存在します。AMRに感染すると、抗菌薬が効く感染症に比べて、症状が重篤化しやすく、死亡率も高いことがわかっています。

◆「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」では医療従事者に対して、AMRについての啓発・教育、動向調査、感染予防の徹底、抗菌薬の適正使用、薬剤耐性菌に対する薬の開発、国際協力などが提案されています。

◆では患者サイドから、何かできることはあるのでしょうか。まず、かぜやインフルエンザでは抗菌薬の処方を希望しないことです。かぜもインフルエンザもウイルスが原因であるため、抗菌薬は効きません。また、細菌による病気で抗菌薬を処方された場合は、医師の指示どおりの服用を守りましょう。たとえば5日間服用とされている薬なら、症状がよくなっても必ず5日間、飲み切ります。体内にはまだ、細菌が生きている可能性が高いからです。

◆AMRの感染の多くは入院患者などの体力・免疫力の低下した人ですが、AMRを発生させる入り口は、私たちの暮らしのなかにあります。正しい知識をもって、AMRを生み出さない行動が求められています。

(監修:医療法人誠医会 宮川病院 内科 宮川めぐみ/2020年5月20日)

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