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高齢者の肺炎治療の実際

本人の意思も尊重

2018年(平成30年)の肺炎による死者は、肺炎9万4654人と誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)3万8462人を合わせると、13万人を超えます。死因の1位はがん、2位心疾患、3位老衰、4位脳血管疾患ですが、肺炎はこれに次いで5番目に多い病気です。高齢者の増加とともに肺炎による死亡は増加しています。

◆肺は口や鼻から吸い込んだ空気から、肺胞周囲に張り巡らされた毛細血管へ酸素を取り込み、血液からは二酸化炭素を回収して体外へ排出するというガス交換をしています。肺炎は肺胞に炎症が起こることで、酸素と二酸化炭素の交換がうまくいかなくなる病気です。

◆症状は、発熱、悪寒、頭痛、関節痛などのほか、せきや息切れ、黄色い膿性のたんなどですが、高齢者の場合、肺炎にかかっても目立った症状があらわれないことも少なくありません。元気が出ない、食欲がない、だるいといった症状のみで、その後、急激に症状が進んで呼吸困難など重症化することがあります。

◆高齢者でとくに注意が必要なのは、食べものを飲み込むときに、食べものが気管支に入り込んでしまうことで発症する誤嚥性肺炎です。寝たきり、認知症、心臓や血管性の疾患がある、噛み合わせが悪い、ものを飲み込む力が弱っているなどのために、誤嚥性肺炎を繰り返しやすく、重症化して死に至る危険があります。

◆肺炎治療の基本は、炎症の原因となった肺炎球菌やマイコプラズマに対する抗菌薬投与です。一般的にはこれらの治療によって治る病気です。しかし高齢者の場合、従来の抗菌薬治療を行っても、必ずしもよい経過をたどらないケースがあります。年齢や体力、既往症などによって、肺炎を発症する前の状態に戻れずに、かえって苦痛や不快感が増すケースも少なくありません。

◆こうした状況をふまえ、2017年に出された新しい「成人肺炎診療ガイドライン2017」では、高齢者の肺炎についての対応が見直され、「個人の意思を尊重した治療」が選択肢に盛り込まれました。

◆高齢者の老衰の進行に伴った肺炎や、がんや心疾患など原疾患の終末期に発症する肺炎では、本人の意思やQOLを考慮した治療やケアを推奨し、患者本人が延命措置を望まない場合にはその意思を尊重する対応を促しています。

◆たとえば、肺炎の治療を行っても死が避けられないような場合、延命が可能だとしてもQOLを維持することが著しく困難である場合には、強力な抗菌薬の使用や人工呼吸器による管理ではなく、痛みなどの症状を緩和することを優先する治療を選択することができます。

◆ただし、本人の意思確認、あるいは本人の意思をわかっている家族が代わって意思の確認ができること、老衰の状況、誤嚥性肺炎を繰り返しやすいかどうか、病気の終末期の判断など、複数の専門医の一致した診断が必要としています。

◆今後も進む超高齢化社会の日本において、一人ひとりの患者の意思や生活の質をより尊重する医療のあり方を示すものといえるでしょう。

(監修:東京医科大学病院 総合診療科准教授 原田芳巳/2020年5月22日)

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