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下垂体ホルモン分泌障害「下垂体前葉機能低下症」

ホルモン補充で改善できる?

「下垂体前葉機能低下症」は、下垂体からホルモンが正常に分泌されないために、下垂体ホルモンおよび末梢ホルモンの分泌が低下する病気です。どんな症状があらわれるのでしょうか。どのように治療するのでしょうか。

◆下垂体前葉機能低下症は、脳の下垂体の前葉という部分からのホルモンが正常に分泌されなくなる病気で、国の指定難病の1つです。下垂体やその上に位置する間脳に何らかの障害が起きることで発症します。脳や下垂体の形成異常、ごくまれな遺伝子異常など先天性のケースのほかは、下垂体やその付近の腫瘍、がんの転移が原因になるほか、自己免疫疾患による下垂体の炎症、放射線治療や外科手術、頭部外傷、分娩時の大量出血による影響などが原因になります。

◆下垂体はホルモン分泌の司令塔で、前葉と後葉に分かれており、前葉はACTH(副腎皮質刺激ホルモン)、TSH(甲状腺刺激ホルモン)、GH(成長ホルモン)、LH(黄体形成ホルモン)、FSH(卵胞刺激ホルモン)、PRL(乳汁分泌刺激ホルモン=プロラクチン)といった6種のホルモンを、後葉はADH(抗利尿ホルモン)とOT(オキシトシン)の分泌を担っています。

◆前葉から分泌されるホルモンのうち、PRL以外の5種類のホルモンには、末消ホルモンの分泌器官である副腎皮質、甲状腺、性腺を刺激する役目があり、それによって各器官からホルモンが分泌される仕組みになっています。そのため、これらのホルモンのいずれか1つ、または複数がうまく分泌されなくなると、副腎皮質ホルモン、甲状腺ホルモン、性腺ホルモンの分泌が減ってしまいます。とくに副腎皮質ホルモンと甲状腺ホルモンは生命の維持に必要なホルモンです。どのホルモンが欠乏するかによってあらわれる症状は異なりますが、いずれの場合も、欠乏したホルモンを補う薬物療法が必要になります。

◆ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)が欠乏すると、副腎皮質ホルモン(コルチゾール)の分泌が減り、倦怠感、食欲不振、体重減少、低血圧、低血糖などの症状があらわれます。副腎皮質ホルモン製剤の内服によって、症状は改善されます。

◆TSH(甲状腺刺激ホルモン)の欠乏では、甲状腺ホルモンの分泌が減り、倦怠感、肌荒れ、便秘、低体温、脱毛、声の低音化などの症状があらわれます。やはり甲状腺ホルモン製剤の内服によって症状は改善されますが、ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)の欠乏と合併しているケースも少なくないので、その場合は副腎皮質ホルモンの分泌低下による症状を悪化させないため、副腎皮質ホルモン製剤を先に投与し、1週間以上してから甲状腺ホルモン製剤を投与します。

◆GH(成長ホルモン)の欠乏では、IGF-I(ソマトメジンC)の分泌が減り、子どもの場合は低身長症、成人後の場合は筋肉減少、骨粗しょう症、内臓脂肪の蓄積などの症状があらわれます。小児期の成長障害には、成長ホルモン製剤の注射をおこないますが、成人後の症状に対しては重症の場合のみ治療対象になります。

◆LH(黄体形成ホルモン)、FSH(卵胞刺激ホルモン)の欠乏では、アンドロゲン、エストロゲンの分泌が減り、思春期以降の第二次性徴が発現しない、男性ではED、女性では無月経など、双方に不妊の症状があらわれます。いずれの場合も、性ホルモン製剤の内服や注射が治療になります。ただし、将来的に子どもをもちたいかどうかによって、性ホルモン製剤の投与方法は異なります。なぜなら、子どもをもちたい場合、男性なら精子形成、女性なら排卵誘発を考慮した投与が必要だからです。

◆小児期の成長障害に対するGH製剤の補充療法と、性ホルモン製剤の補充療法については、将来的な効果に関して確立した見解はありません。なお、PRL(乳汁分泌刺激ホルモン=プロラクチン)の分泌が低下すると、授乳中の母乳分泌が低下しますが、通常、治療はおこないません。それは、ミルクで十分に赤ちゃんが育つからです。

◆ホルモン補充療法のなかでも、副腎皮質ホルモン製剤、甲状腺ホルモン製剤については、適切に継続されていれば、健康な人と同じように生活できることが疫学調査によって確認されています。内分泌科専門医などによる治療、経過観察を受け続けていくことがとても大切です。

(監修:医療法人誠医会 宮川病院 内科 宮川めぐみ/2020年7月29日)

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